前の記事はこちら博士後期課程に行った理由①
博士前期課程で所属していた研究室は、学部生が多く院生が少ない、さらにテクニシャンや秘書さんはいない環境であった。私立にはこういう環境も多いと思う。その中で和気あいあいと研究をするのも楽しかったのだが、どこか「本当の研究の環境はこうではない」とずっと思っていた。
研究の世界は茨の道だし、厳しい世界だとなんとなく理解しているが、私は本当の世界を見たのか?本当の世界を見て、そこから研究の道に行くか否か判断してもまだ遅くはないのではないか?と思った。
ポジティブな捉え方をすると、最先端の研究をしている研究室の一員となって、まさに新しい知見が生み出されるその瞬間に携わりたいという気持ちがふつふつと沸き起こったのだ。
正直、博士前期課程での研究も面白くなっていたし、論文も出版したところだったため、そのまま継続したい気持ちもあった。ただ、メジャー雑誌にコンスタントに論文を通すような最先端のラボに所属して、その人たちの生活や実験の仕方などをその場で学んでみたいという気持ちもあった。あわよくば、自分も成長してメジャー雑誌に載せられるような大きな仕事がしてみたかった。
ちなみに、どこまで書いていいか悩む闇の事情でもあるが、院生たちに対する影のアカハラ・パワハラのはびこる場所からは去るべきという様々な人のアドバイスの結果でもある。この件に関しては、しばらく経ったもののまだ自分の中で昇華しきれていないことが多いため今回は割愛する。
迷いに迷って決断したものの、時期がかなり遅かった。
就活解禁してからも、どうしようと悩み、毎晩電話していた。
辛抱強く電話に付き合ってくれた現旦那様には大変感謝している。
当時、就職したい大きな理由は経済面での不安だった。
博士前期課程で、日本学生支援機構に多額の奨学金という名の借金をしており、さらに借金が膨れ上がることへの不安が大きな要因であった。
これは博士課程に進学する人ほぼすべてに当てはまる不安であろう。
学部卒で就職した友人たちは社会人3年目で給料をもらって自立した生活を送っているというのに、対して自分は借金を抱えて何に向かってやっているのかという大きな不安にさいなまされ、就職して生活を自立させたかった。
ネガティブな理由だ。
対して、博士後期課程に進学したい理由は、
・一流の研究環境に身を置き、研究者の取り巻く世界を体験してみたかった
・もう少し、基礎よりの研究をこの手でやってみたかった
ポジティブな理由が大きかった。
経済面がネックだったが、それ以上に博士後期課程に進学する、想像のつかないワクワク感があった。
そして、現旦那や現旦那の友人の言葉、当時の指導教官の言葉も私の中で進学を大きく後押ししてくれた。いまだに覚えている数々の言葉。
「修士で論文も書くくらいには実績を積んでいる。そして就職が出来なかったからなんとなく、という感じで博士に行くわけではないし、ポジティブな理由で博士に行くなら進学してみたらいいんじゃない?」
「君は、就職しても多分それなりにいい人生は待っていると思うし、君の人生なんだから君が決めることだ。でも僕は、君には研究者は似合うと思っている。」
「ご飯くらい食べさせてあげるから博士行ってみなよ。そこで挫折したら、そこからだって、就活したりハローワーク行ったりどうにかやり直せるよ。」
「俺は修士を出て就職したその先にどんな人生が待っているか君に見せるから、君は博士を出た先にどんな人生が待っているのか俺に見せてよ。」
最後の一言は、私の中でこれがプロポーズの言葉だったということにしている。
・・・「俺そんなこと言ったっけ?」って言う旦那が思い浮かぶ。
結局、その言葉たちに後押しされて、そこから(M2の春)必死にラボ探しをして今に至る。
あちこちにメールを出したり説明会に行ったりして、何とかギリギリに見つけて、試験を受け、ドタバタで進学した。・・・人生設計は、計画的に!
送り出してくれた当時の指導教官、受け入れてくれた現指導教官、経済面で結局頼りにしてしまった親、そして当時の言葉以上にずっと支えてくれている旦那がいるので何とか生きていられている。
でもやっぱり大学院生を取り巻く環境はつらいものがあるなと思う。
経済面では、博士前期課程でも、博士後期課程でも、出せる奨学金はすべて出した。条件に合うものはなかなか見つけられないが、それでも出せる限り出して、落ちまくった。
運よくいくつか通ってくれたので首の皮一枚つながった状態だが、いつも経済面の不安を抱えながら、そして卒業できるのか不安を抱えながら、孤独と戦いながら生活をしていかなくてはならず精神面的にはきつい時期もあった。(1ヶ月で7kg痩せたり、何もかもがいやになって鬱状態になったり、ストレスで消化管がやられて毎日おなかを壊していた時期もあった。)
博士課程進学に悩んでいる人がもしこの記事を読んだ場合、私は今の日本の状況で安易に博士課程は勧めない。修士まではいいと思うが、その後の博士後期課程は、就職状況や経済状況、精神面でやっていけるか良く悩んで決めた方が良いと思う。
現時点では、博士前期課程では想像もできなかったようなグローバルな最先端のアカデミアの世界を見ることができたという点、そして経済面が何とかなったという点で博士後期課程に来たことは良かったとは思っているが、卒業できるかはわからないし、その後就職できるのか、ポスドクができるのか、生き残っていけるのか、いつも不安だし悩んでいる。バイオ系だからというのもあるかもしれない。周りの優秀な人がアカデミアを去るのも次々と見る。ある程度裁量権もあり時間の使い方も自由だけれど、その分色々なタスクや将来への不安が常にある。罪悪感のない休日なんて、修士の頃からずっとない。優秀な研究者も常に資金繰りに必死でいつまでも終わらない安定なんてない状態を見て、やはり厳しい世界だと感じる。
やっぱり、うまくまとまらないや。